Advanced Medical Care Inc.

病気にならない“未病”への挑戦
真に健康で美しい人生を送れる
社会を目指して

代表取締役社長 古川哲也

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米国最高峰の医療機関ジョンズ・ホプキンス・メディスン(JHM)と日本で唯一国際提携を実現させ、2007年3月にオープンした「東京ミッドタウンメディカルセンター」。その立ち上げに古川が関わったことが、(株)アドバンスト・メディカル・ケア(AMC)創業の原点である。

東京ミッドタウンに米国最高峰の医療機関と提携した医療機関をつくる

現:東京ミッドタウン

開業医の長男として生まれ、幼い頃から医療の世界を身近に感じつつも、古川が進路として最終的に選んだのはビジネスの世界だった。人の暮らしや経済、文化にまで直接的な影響を与える大規模な都市づくりに憧れ、慶應義塾大学を卒業後、日本を代表する大手デベロッパー、三井不動産(株)に入社した。都市づくりという大きな夢を抱き第一志望の会社に入社するも、時はちょうどバブル崩壊の渦中。配属された川崎駅前の再開発プロジェクトにおいて、オフィスビル主体とした業務都心に改新するという計画から、比較的景気の影響を受けにくいショッピングセンター主体の再開発事業へと変更を余儀なくされたタイミングであった。しかし、そこで得たものは大きかったという。

「商業主体の再開発事業になったことで、綿密な市場調査を繰り返し、いかにお客様をその街に呼ぶかということを学ぶことができました。そのノウハウは今でも大切な財産として医療機関の集患支援に役立っています。」と古川は言う。

いくつかのプロジェクトを経て古川が担当することになったのは、六本木防衛庁跡地再開発(赤坂9丁目計画)。AMCが本社を置く、現:東京ミッドタウンの開発プロジェクトであった。当時この地にあった防衛庁本庁が市ヶ谷に移転することに伴い、残されたおよそ10ヘクタールの土地の一般競争入札が実施され、三井不動産を幹事社とするコンソーシアム6社が落札。古川はこの土地取得のための競争入札から都市計画の決定、開発許可の取得、地元住民との折衝などに従事し、大規模な都市づくりという入社当時の夢を現実のものとしていた。三井不動産に入社して9年目のことである。

そしてこれまで進めてきた計画を元にいよいよ着工し、開業に向けた準備を行っていくというタイミングで古川に新たな命が下った。それは、東京ミッドタウンという街の目玉に、米国の超一流医療機関と提携したクリニックを開院するということ。

このミッションのため古川は単身で米国に渡り、全米の名だたる医療機関との交渉をスタート。幾度となく渡米と交渉を繰り返し、ベストな提携相手として、JHMと日本初の提携を結ぶ話をとりまとめた。JHMは、その傘下にあるメリーランド州ボルチモア市の「ジョンズ ホプキンス病院(The Johns Hopkins Hospital)」が、米国U. S. News & World Report 誌の「全米ベストホスピタルランキング」において21年連続第一位に選ばれるという他に類を見ない実績を有する米国を代表する超一流医療機関グループだ。

東京ミッドタウンクリニック(外来診療)

「しかし、アメリカの医療機関は日本で医療はできないので、JHMと組む国内医療法人を見つける必要がありました。これが大変難航しました。」

古川は、日本で60を超える医療法人にこのJHMとの提携を持ちかけた。しかし、実際に手を挙げたのはたった4つの医療法人のみ。その中の1つが、会員制リゾートホテル事業で日本を代表するリゾートトラスト(株)の提携医療法人、トラストメディスンであった。そして、JHMの選考を経て、提携先はトラストメディスンに決まった。

古川のビジネス人生に大きな影響を与えた出会い

リゾートトラスト(株) 伏見有貴 代表取締役社長

ほとんどの医療法人が米国医療機関との提携に否定的な見解を示す中、現:リゾートトラスト(株)伏見有貴 代表取締役社長(当時は同社取締役 経営企画室長 兼 (株)ハイメディック取締役)は、その提携に、次世代の発展的なメディカルセンター開発の可能性を見出した。リゾートトラスト(株)は会員制ホテル「エクシブ」や「ベイコート倶楽部」、シティホテル「ホテルトラスティ」などを運営する企業で、日本におけるリゾート会員権のトップシェアを誇る。グループ全体としてはホテルレストラン事業を核に、ゴルフ事業やシニアライフ事業など多事業を展開しており、中でもメディカル事業においては1994年にグランドハイメディック倶楽部という会員制の総合メディカルサポート倶楽部を山中湖のリゾートホテル内に創設。世界に先駆けてPET(陽電子放出断層撮影)による画像診断を取り入れた高度検診サービスを提供。一般的ながん検診では発見できなかった約4ミリの初期がんの検出に成功し、数々の学会発表や論文発表を行うなど先進医療に力を入れている。リゾートトラストグループは、そのグランドハイメディック倶楽部として当時はハイメディック山中湖コース、ハイメディック大阪コース、ハイメディック・東大病院コースの3コースを運営するなど事業拡大中であった。伏見はこのメディカル部門の新規事業企画立案の責任者で、当時の古川からの提案に大変興味を示し、米国医療機関と提携したクリニックの開業に向けて、強力な支援を行った。

「当時のグランドハイメディック倶楽部が、ハイメディック大阪コースやハイメディック・東大病院コースという新規プロジェクトを推進する中で、米国の医療機関と提携したクリニックを東京ミッドタウンの中に実現することで、今後のメディカル事業において大きなシナジーを創造することができると伏見さんは確信され、リゾートトラストの強力なバックアップを得ることができました。この判断がなければ、AMCや、現在リゾートトラストが進めている数々のメディカルプロジェクトが生まれていなかったと思います。」

そしてこの出会いにより、都市開発プロジェクトに燃えていた古川の心境に変化が生じていく。

AMC起業、そして東京ミッドタウンメディカルセンターOPEN

一番左が古川(東京ミッドタウンメディカルセンター開業時)

JHMとの提携に伴う米国滞在や伏見との出会いを通じて医療ビジネスに深入りしていく中、古川はある疑問にたどり着いた。それは、今後日本が高齢化社会を迎えていく中で、今の医療の在り方がベストなのだろうか、ということ。確かに日本の国民皆保険制度は、皆が平等に医療を受けられるという点において優れている。しかも日本の医療技術は世界トップレベルの水準といえる。しかし、医療技術の進歩などにより日本人の平均寿命は延びているものの、厚生労働省の資料によると、平均寿命と健康寿命(日常生活に支障がない寿命)には、日本人男性平均で8.84年、女性平均で12.35年の差があるというデータ※1もある。つまり、平均寿命は長くても、寝たきりになるなど生活に制限を受けている期間が10年近くもあるのが現実である。また、大学病院に通院しても、「3時間待ち3分診療」と揶揄されるように、患者満足は決して高いものとは言えないのが実情だ。 健康長寿社会を実現し、顧客第一の観点でニーズに応えるという点においては、まだまだ欧米に及ばない点も多く、そこにビジネスチャンスがあると感じた古川は2005年12月に三井不動産(株)を退職。真に健康でより美しく生きるための医療的なアプローチを開発するという新たな夢を抱き、2006年2月にAMCを設立したのである。リゾートトラストの伏見と、そして、ジョンズホプキンスインターナショナルのモハン・チェラッパ医師が、バックアップのために取締役に就任してくれた。

AMC設立後は、三井不動産(株)とリゾートトラストグループの共同出資により設立された(株)東京ミッドタウンメディスンとJHMとの間に入り、コンサルタントという立場で東京ミッドタウンメディカルセンターの開業支援に携わった。米国では美容医療やドクターズコスメをはじめ、サプリメントを含む予防医療のシーズにも触れ、またUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)や名古屋で歯科医療チェーンを経営している歯科医、飯田吉郎氏から歯科領域における自費診療の知見を得るなど、新たなビジネスへの可能性を次々に広げていった。そしてその可能性をより確かな基盤で実現させていくために、2006年7月にAMCはリゾートトラスト(株)の子会社となり、リゾートトラストグループの一員として、その新しいビジョン一つ一つを形にしていったのである。その結果、東京ミッドタウンメディカルセンターは、一般外来診療や健診ドックセンターに加え、皮膚科形成外科クリニックノアージュやデンタルクリニック、ヘルスケアショップTMMC Plusまで併設して2007年3月にオープン。AMCは同センターのマネジメント全体を任されることになったのだ。

 

※1:健康寿命と平均寿命の推移 - 厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-02-06.html

 

※所属・インタビュー内容は、2021年5月時点のものです
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