スーパードクター誕生の軌跡
革新を生んだ挑戦者のレジリエンス(resilience)


「医療イノベーションが切り拓く未来」をテーマに、世界の最前線で活躍する医師と、リゾートトラスト株式会社メディカル本部 本部長・古川が、医療の進化とその可能性について語り合う対談企画が始まりました。
第1回目の対談では、米国テキサス州ヒューストンにある世界有数のがん研究・治療機関「MDアンダーソンがんセンター」で腫瘍外科医として活躍する生駒成彦医師を迎え、最先端のがん治療や医療イノベーションの未来についてお話を伺いました。
今回は特別編として、インタビューを通じて垣間見えた生駒医師の歩み――先生の挑戦と揺るぎない信念をご紹介します。

スーパードクター誕生の軌跡
革新を生んだ挑戦者のレジリエンス(resilience)

古川:先生が医師、外科医を志した理由をお聞かせください。実は私の父も医師でしたが、私は手先が不器用で、父の後を追うことはあきらめたのですが(笑)
先生のお父様も外科医でいらっしゃいますが、やはりお父様の影響で医学の道に進まれたのでしょうか。

生駒先生:医学を志すというよりは、自然な流れで外科医になりました。父の姿を見ながら、自分の技術が直接患者さんに影響を与えることを実感し、これほどやりがいのある職業は他にないと思いました。

古川:栃木県済生会宇都宮病院での初期臨床研修、慶恋義塾大学外科医局を経て、なぜ渡米の選択をされたのでしょうか。


生駒先生:アメリカに渡った理由の一つは、国際的なリーダーとして、多くの人々に影響を与えられる存在になりたいという思いでした。より広い視野を持ち、世界に通用する力を身につけたいと考えました。
最先端の技術大国であるアメリカで、自分の可能性を最大限に試したいという挑戦心もありました。新しい環境に飛び込み、自分自身を成長させていくことに強い魅力を感じていました。僕はどちらかというと、未知の世界に積極的に飛び込んでいきたいタイプなので、アメリカという舞台はまさに自分にとって最適な場所だったと思います。
明日が分かっている時よりも明日が分からない人生の方が楽しい。勝てる勝負よりも、結果がどうなるか分からない戦いの方が、より面白く感じます。チャレンジ精神という意味では、失敗を恐れずに挑戦し続けることが重要だと考えています。もしうまくいかなかったとしても、またやり直せばいい——そんな気持ちで、今も挑戦し続けています。
結果がどうなるかわからない不確実性があるからこそ、チャレンジする面白さがある。一方で、苦労や挫折の連続であり、時には屈辱と思ってしまうこともあります。

米国特有の苦労も経験しました。アメリカで研修を受けた際に強く感じたのは、日本では「これだけ努力すれば、これくらいの評価を受けるはずだ」と比較的予測できるのに対し、アメリカではその評価が大きく変動するという点でした。日本では、自分の努力と評価がある程度比例することが多いですが、アメリカではその関係が大きくブレることがあります。最善を尽くしたのに怒鳴られることもあれば、それほど力を入れていない時に思いがけず褒められることもある。この経験を繰り返すうちに、人の評価よりも 「自分自身の評価」 を大切にし、目標達成に集中することの重要性に気づきました。

自分の満足度を基準にすることで、他者の評価に左右されることなく、自分のやりたいことに挑戦できるようになり、それが気持ちの余裕にもつながっていると感じます。アイデンティティの一部を日本に置いてきていることで、「周りにどう思われてもいいや」という気持ちで自分の道を進むことができるのも、一つの支えになっているのかもしれません。

評価の尺度としてアウトカムを重視するのではなく、「プロセスそのもの」 に意識を向けることが大切です。最終的な結果以上に、「自分が手を抜かなかったか」は本人にしか分からないこと。それを自分自身で確認し続けることで、より充実したキャリアが築けたように思います。

古川:この考え方は、イチローのようなプロフェッショナリズムにも通じるものがありますね。

生駒医師:イチローと言えば、米国でもう一つ感じたことがあります。トップのアスリートと同様に、医師や研究者にとって 「バーンアウト」が深刻な問題でもあり、長期的なキャリアを維持するためには適切な調整が必要ということです。

タイガー・ウッズの例が象徴的です。彼のすごさは、単に幼い頃からゴルフをしていたことではなく、どれほどの試練を経験しても 「決して競技をやめなかったこと」にあります。スキャンダルや挫折、成績の低迷が続いても、なお競技を続ける姿勢こそが、彼の強さの本質ではないでしょうか。
勝ち方を知っている男が、まだ諦めずに挑戦を続けている——私は、その姿を見ていると、ずっと応援したくなります。特に「レジリエンス(resilience)」という言葉が、私が最も好きな単語です。これは、単なる「カムバック(comeback)」とは違い、困難に直面し、一度縮んだ状態から再び力強く伸びること を意味します。つまり、くじけない力、折れない精神のことです。
もちろん、疲れた時は休むことも大切です。私自身、嫌なことがあった時には「ふて寝」することもあります。ただ、しっかり休んでリフレッシュし、また立ち上がる力こそが、レジリエンスです。この 回復力と再挑戦する精神こそが、どんな分野においても成功を生み出す鍵だと感じます。

古川:タイガー・ウッズといえば、ビジネスの面でも学ぶところ、勝ち方を知っている選手ほど計算されたプレーをしていると感じます。ゴルフのように、状況によって一気に攻めるか、安全策を取るかの選択が重要です。タイガー・ウッズのプレースタイルには、「逆算思考」が深く組み込まれています。彼はドライバーを打つ際に、「どこからバーディーパットを狙うか」を最初に考え、その戦略をもとにプレーしていると言われています。この逆算思考は、ビジネスにも通じるものがあります。最終的なゴールを見据え、そこから最適なプロセスを逆算して進めることが重要です。戦略的にプレーするゴルファーと同じように、「困難を乗り越えながら逆算し、最善の選択を積み重ねていくことが成功の鍵」となるのではないでしょうか。


生駒 成彦(いこま・なるひこ)
テキサス大学MDアンダーソンがんセンター 外科腫瘍学部・准教授
慶應義塾大学医学部を2007年に卒業後、2011年に渡米。米国ヒューストンのテキサス大学医学部で外科研修を経て、2015年からMDアンダーソンがんセンターで腫瘍外科研修を履修。2018年より同センターで膵・胃がんの手術を専門とし、ロボット腫瘍外科プログラムディレクターとして勤務。高度な技術を駆使した腹腔鏡・ロボット手術の分野で世界的第一人者として、臨床研究でも革新を生み出しています。

Entry

活気あふれる職場を舞台に、
私たちとさらなる飛躍を
目指しませんか。

エントリー
募集要項
中途向け募集要項 新卒向け募集要項

外部サイトからも
応募いただけます

中途採用

新卒採用