医療ツーリズムで切り開く医療経営の未来


日本の医療機関が直面する深刻な経営課題

昨今、メディアでもたびたび報道されているように、日本全国の病院の多くが赤字経営に陥っています。物価上昇や制度上の制約に端を発した、次にあげる「三重苦」とも言える構造的な課題が医療機関を圧迫しています。

1. 人材投資の課題
医療職の不足により、優秀な人材確保と育成に向けた投資が増加しています。しかし、診療報酬制度のもとでは自由な価格転嫁が認められておらず医療機関の経営にとって大きな負担となっています。

2. 医療機関の消費税負担
保険診療では消費税を患者様から徴収できない一方で、医療機器や薬剤の購入時には10%の消費税を支払う必要があります。この制度構造が、医療機関の財務をさらに圧迫しています。

3. 診療報酬の実質的な減収
診療報酬は形式上引き上げられているものの物価や人件費の上昇に見合う水準ではなく、現場では「実質的な減収」との声も聞かれます。一般企業であれば価格転嫁による対応が可能ですが、医療機関はその選択肢がありません。

ただし、人材投資については、私は「人件費」という言葉や社員をコストと捉える考え方には強く異を唱えたいと思います。社員は経営に負荷をかける存在ではなく、企業に利益と価値をもたらしてくれるかけがえのない財産です。だからこそ私たちは「人材」を組織の成長を支える貴重な「人財」として捉えて、継続的な賃上げと処遇改善に取り組んでいます。この姿勢こそが、医療機関としての持続可能な成長と、社会への貢献につながると信じています。

新たな価値創造への挑戦:医療ツーリズム

私たちのメディカル事業は、厳しい経営環境にあっても、黒字経営を維持し、着実に規模を拡大しています。しかし、前述のような厳しい経営環境にあって、この先も継続的な賃上げを実現するためには、新たな価値の創造と、新しいお客様との出会いが不可欠です。その一つの柱が、インバウンド・医療ツーリズムの推進です。

現在、日本を訪れる外国人観光客は年間4,200万人規模に達し、過去最高を更新しています。一方で、医療を目的に来日する外国人はわずか3〜5万人程度にとどまっており、日本の高度な医療技術を考慮すると、ここには大きなギャップと可能性が存在します。

※医療滞在ビザ発給数に加え、短期滞在ビザによる訪日医療機関受診者の推計。

この背景には、国民皆保険制度に守られ、国内需要だけで収益性を維持できていた日本の医療業界のメンタリティがあると考えられます。しかし、経営危機に直面する医療機関が増える中、従来の考え方ではもはや持続可能な成長は望めません。

私たちの医療施設は、強力なマーケティング基盤を持ち、各施設の稼働率も業界で高い水準にあります。それでも、稼働率が100%に至っているわけではありません。

稼働率をさらに上げることで、家賃・内装工事費・設備投資費といった固定費を変えることなく、収益を大幅に伸ばすことが可能です。そしてその成果は、社員の給与や処遇改善の原資となります。外国人ゲストの受け入れは、稼働率向上に直結する取り組みでもあり、私たちの未来を切り開く重要な挑戦なのです。

外国人人財活用の重要性

医療ツーリズムの推進と並行し、深刻化する人手不足への対応として、外国人人財の積極的な活用が不可欠です。すでにシニアレジデンスでは、外国人スタッフなしには事業継続が困難な状況となっており、医療分野においても同様の課題が顕在化しています。

私たちは、外国人人財の登用を単なる人手の補完ではなく、人手不足の解決と国際的なネットワーク構築という二つの価値の創出と捉えています。

そして、安定した外国人雇用を実現するために、海外に日本語教育と専門技術教育を組み合わせた人財育成機関の設立を構想しています。この構想により、日本での実務経験を積んだ人財が将来的に母国の高齢化社会を支える専門家として活躍する――そんな循環型の人財育成システムは、双方の国にとって大きなメリットをもたらします。

20周年、30周年に向けた大きな挑戦

もちろん外国人の受け入れに不安を感じる方もいるでしょう。しかし、AIや通訳技術の進化により、言語や文化の壁は確実に低くなっています。今、私たちに必要なのは「やってみよう」という前向きな意志です。

医療ツーリズムや外国人人財の活用は、決して目先の収益確保だけを目的としたものではありません。私たちが目指すのは、お客様一人ひとりのパーソナル・ウェルビーイングに貢献する医療の根幹を大切にしながら、持続可能な経営基盤を構築することです。

この先、ミッドタウンクリニックグループやアドバンスト・メディカル・ケアの20周年、さらには30周年に向けて、高齢化が進むアジア諸国との連携を深め、人材交流と技術移転を通じて、日本発の高レベルな医療サービスをアジア全体に展開する。そんなグローバルな視野を持ったチャレンジングな医療経営が、これからの時代には求められています。

医療ツーリズムへの取り組みは、人財への投資を通じて組織全体の価値を高め、持続的な賃上げサイクルを実現する重要な戦略なのです。

私たちが目指すのは、世界に誇れる日本の医療技術が適正に評価され、すべてのステークホルダーが持続的に成長できる医療エコシステムの構築です。


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