経営戦略と事業展開 持続的な賃上げと 「ご一緒します、いい人生」の実現に向けて
今回はリゾートトラストグループの医療・介護事業がこれからどこへ向かうのか、その経営の軸となる考え方についてお話します。テーマは「持続的な賃上げ」と、私たちのグループコンセプトである「ご一緒します、いい人生。」です。これらは別々の話ではなく、すべてが一本の線でつながっています。
国の方針と連動した経営を行う
企業経営では国の方向性から目を背けることはできないと考えています。現在、国の経済政策で最も重視されているのは「持続的な賃上げ」です。 コストカットを前提とした経済から脱却し、付加価値を高め、成長し、その成果を賃金として還元する 。この方針は、まさに私たちがこれまでも目指してきた姿そのものです。
この国の従業員の給与を上げることを経営の根本に置いたとき、賃上げには必ず原資、つまり会社の利益が必要となります。そして、その流れを踏まえたうえで、次に重要になるのが「賃上げをどう支えるか」という視点です。
賃上げを支える2つのエンジン
賃上げを実現するために重視しているのが、二つのエンジンです。
一つは、付加価値の向上。そのために、安売り競争には決して戻らず、自分たちにしか出せない「付加価値」を高め続けなければなりません。医療・介護・プロダクトすべての事業において、他社にはない価値を提供することです。
二つめは、生産性の向上です。人手不足の時代にあっても、AIや新しい技術を用いながら、「2人でやっていた仕事を1.5人、あるいは1人でできるようにする」。この一人当たりの生産性向上こそが、給与を上げるための確実な原資になります。
では、実際に現場ではどのような変化が起きているのでしょうか。
生産性改革の実践例:シニアレジデンス
生産性向上の具体例として、シニアレジデンスの取り組みがあります。
これまでスタッフ10名で入居者15名をケアしていた体制で、現在は17名まで対応できるようになっています。さらに5年計画で20名を目指し、その進捗に合わせて段階的な賃上げを実際に行っています。
私は、現場改革がきちんと社員の待遇改善につながる経営でなければ意味がないと考えています。
日本の「価値」を世界へ
私たちが持つ価値は、日本国内だけに向けたものではありません。
日本のサプリメントや医療サービスは、「品質が高く、安全である」と世界から評価されています。ベトナム政府関係者が来日した際、ドラッグストアで日本のサプリメントを大量購入したことや、自社製品であるプラズマローゲンが中国で注目を集めたことは、その象徴です。 日本のお客様だけでなく、世界のお客様を視野に入れることで、私たちの価値と収益性はさらに高まると確信しています。
国内で培った価値を世界へ広げることで、さらに大きな成長の可能性が生まれるでしょう。
先端医療への継続的な投資
医療事業において、私が一貫して力を入れているのが先端医療への投資です。
現在、国内にわずか4台しかない立位CTを導入したのも、日常に近い状態で、より正確な診断を行うためでした。また、PET・MRIについても国内最多クラスの導入を行い、単に機器を置くだけでなく、比較研究を通じて医療技術の発展に貢献しています。
私は、最先端を現場に取り入れることで、医療そのものを進化させたいと考えています。
医学的エビデンスに基づく商品開発
サプリメントや化粧品の開発についても、私の考えは明確です。 思いつきの商品は作らない。検診データや医師の知見といった医学的エビデンスに基づき、意味のある商品だけを世に出す。プラズマローゲンやエクオールは、その結果として生まれました。 現在は、老化予防サプリメントの開発にも取り組み、「今日と明日を同じ状態に保つ」ことを目指しています。
「ご一緒します、いい人生」に込めた思い
「ご一緒します、いい人生」とは、楽しい時間を提供するだけの言葉ではありません。病気のケアをし、介護を担い、人生の最期まで寄り添う覚悟を示した言葉です。
介護現場では、重度の認知症や高齢の入居者であっても、医療的知見を活かしながら、ご家族と共に最期の日まで寄り添い続けています。
早期発見の先にある価値
検診を「早期発見・早期治療」で終わらせてはいけないと考えています。
紹介先で不安を抱え、戻ってこられた患者様に対し、「どう生きるか」を一緒に考える。その人の心に寄り添い、「心の平和」を提供することが、これからの医療に求められる価値です。
そして、実はその価値を支えているのが日々の基本の行動です。
ホスピタリティの原点は挨拶
日々の基本行動で最も大切と考えるのが挨拶です。挨拶は対人サービス業における基本動作であり、最強の武器です。
挨拶が徹底されている施設ほど、顧客満足度が高く、結果も出ています。
日々の挨拶一つひとつの積み重ねこそが「ご一緒します、いい人生」の原点だと私は思っています。
プロフェッショナルへの道「 質」は「量」から生まれる
私は、人材育成について、非常にシンプルな考え方を持っています。
「質」は「量」からしか生まれないということです。
現場で「新人だから不安」「ベテランにお願いしたいと言われる」という声をよく聞きます。しかし、私はその不安を解消する方法は一つしかないと考えています。
それは、圧倒的な経験量を積むことです。
例えば、年間10万人が来院する仙台のクリニックでは、看護師が日常的に非常に多くの処置を経験します。その結果、失敗率は1/1000以下となり、自信が生まれ、緊張が消えていきます。一方で、経験数が限られる環境では、どうしても緊張が残り、それが不安として相手に伝わってしまう。才能やセンスの問題ではありません。経験の絶対量が、人をプロフェッショナルにするのです。
だからこそ、私は来院数の多い施設での研修や、実践機会を意図的に増やすことが重要だと考えています。
若手であっても、十分な経験を積むことで、自信と技術は必ず身につきます。
年齢やキャリアの長さではなく、どれだけ実践を積んだか。それが、医療・介護の現場における本当の実力です。
プロフェッショナルとは、生まれつきの存在ではありません。 「量」を積み重ね、その結果として「質」を手に入れた人のことを、私はプロフェッショナルと呼びたいと思います。
未来へのアクション
今後の経営の羅針盤として、
・付加価値と生産性の向上による持続的賃上げ
・先端医療とエビデンスに基づく事業展開
・「ご一緒します、いい人生」
これに加え、「量を重ねてこそ質が生まれる」という人材成長の考え方をみなさんと共有します。
基本に忠実に、現場で経験を積み、皆さん一人ひとりがプロフェッショナルとして成長していくこと。それが、グループ全体の未来につながると、私は確信しています。