Advanced Medical Care Inc.

病気にならない“未病”への挑戦
真に健康で美しい人生を送れる
社会を目指して

代表取締役社長 古川哲也

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開業直後の大きな赤字、さらに続いたリーマンショックを乗り越え2009年に黒字化

東京ミッドタウンのオープンと同時に開院した東京ミッドタウンメディカルセンター。米国最高峰の医療機関と提携したクリニックということでオープン当時から大きな注目を集めたが、決して順調には進まなかった。クリニックの新規オープンにあたって200人のスタッフが一気に集まったものの、医師をはじめとする医療従事者や事務系スタッフなど考え方の違いから意見がぶつかることも多く、人も離れていった。また売り上げも予想を下回って赤字が続き、困難の連続だったという。さらに追い打ちをかけるように2008年9月にはリーマンショックが起きた。マーケットは冷え込み、美容や審美歯科など、自費診療の患者は激減した。リゾート事業を核とするリゾートトラスト(株)にも影響はあり、AMCはオープン後まもなく追い込まれてしまう。古川はここで黒字化を実現できなければAMCも自分自身のキャリアも終わってしまうと感じ、2009年6月までに黒字化することを宣言。まさに背水の陣で経営改革に取り組んだのである。サービス一つ一つをきちんと見直し、無駄を省くとともに、伸びているサービスにリソースを集めることを徹底した。そして遂に、リーマンショック後という厳しい経営環境の中、宣言どおり2009年6月までに黒字化を達成したのである。

「本当に苦しかったですが、リーマンショックが会社の体質を変えるきっかけになりました。その時に頑張ってくれた医師をはじめ、スタッフには本当に感謝しています。今でも残ってくれている人たちは、ほとんどが管理職やリーダーとして活躍しています。」と古川は当時を振り返りながら語った。

黒字化してからは新規事業にも積極的に取り組み、次々に新たな医療サービスを開発していった。2009年7月には東京ミッドタウンメディカルセンターとして初となる会員制医療サービス「プライベートドクター」をスタート。2010年3月には東京ミッドタウン先端医療研究所におけるがん免疫療法「樹状細胞ワクチン療法」をプロデュース。同じく2010年7月には浜松町ハマサイトクリニック及び東京ダイヤビルクリニックの運営支援に関する業務委託契約を締結し、東京ミッドタウンメディカルセンター以外にも運営支援する医療機関を増やしていった。また、2011年7月に予防としての血液浄化療法を導入支援し、2012年3月には認知症予防に効果が期待される「プラズマローゲン」サプリメントの開発・販売会社を合弁で設立した。さらに同年6月には在宅医療サービスを中心とするシニア医療にも参入し、8月には放射線治療専門クリニックと業務委託契約を締結、更年期対策サプリメント「エクオール」の販売なども手掛けるようになった。顧客第一の観点で様々な商品開発に取り組むとともに、今では全国で10を超える医療機関の運営支援にAMCが携わるまでに拡大している。

(左)「プラズマローゲン」や「エクオール」など、医師監修のサプリメントを取り揃える
(右)高精度放射線治療を行う東京放射線クリニック

パートナーとなる医師たちとの出会い

「正直なところ、医療ビジネスを展開するとなると、医師の協力なしには始まりません。年齢が大きく異ならない、将来を展望して一緒に仕事をしていただけるパートナーとなる医師の存在なくしては、AMCは成り立ちません。」と古川は語る。

AMCはそうしたパートナー医師が、執行役員に就任している。AMCの最高医療責任者執行役員である田口淳一医師は、東京大学医学部卒業後、天皇皇后両陛下の健康管理に従事する宮内庁侍従職侍医や大学病院の循環器内科の立ち上げなどに携わり、「患者第一」の理念に基づいたクリニックを日本でつくりたいと思っていた。田口医師は、そもそも、米国の超一流医療機関との提携の発案者である。その構想を実現させるために、古川と共に開業に向けて緻密な計画を練り、そして、東京ミッドタウンクリニックの院長に就任。その後に設立することになる東京ミッドタウン先端医療研究所の所長にも就任し、がん免疫療法や遺伝子検査など最先端医療を提供していく立役者となるのである。

一番左が古川、左から3番目の白衣姿が田口院長(ジョンズ・ホプキンスのメンバーと)

「東京ミッドタウンクリニックの顔であり、田口先生なくしては、東京ミッドタウンクリニックもAMCという事業そのものも始まっていない。まさに創業者のお一人です。」と古川は言う。

また、同じくAMCの執行役員であり、東京ミッドタウンクリニックのVIP部門である特別診察室長に就任した渡邉美和子医師は、かつてメタボ対策を中心に、アンチエイジングや予防医療などに力を入れていたクリニックの院長を務めており、保険診療だけではカバーしきれない患者ニーズに対応してきた豊富な経験を有する。六本木においては特に会社役員や経営者が多く、渡邉医師の参画によって健康意識が強く、質の高いサービスを求める人たちに対する医療サービス体制がより充実したものとなった。また、渡邉美和子医師率いる特別診察室の存在が、のちにリゾートトラストグループとしてAMCが飛躍していく上で重要な会員制検診の受託という役割を担い、大きな力となってゆくのである。

渡邉美和子医師(上段中央)率いる特別診察室のメンバー

さらに、東京ミッドタウンで美容医療やドクターズコスメの開発・販売を手掛けるにあたり欠かせなかったのは、元:東京ミッドタウン皮膚科形成外科クリニックノアージュ院長を務める今泉明子医師との出会いである。

JHMとの提携に伴い米国に滞在する中で、古川はJHMのコスメティックセンターを訪れ、衝撃を受けたという。

「ジョンズ・ホプキンスのコスメティックセンターでは、一つの施設内で皮膚科から美容形成外科など、医療から美容に至るまでのサービスを提供していました。勤務する形成外科医は、例えば午前中には美容のレーザー治療を行い、午後は皮膚がんの治療を行うといったワークスタイルです。皮膚疾患に関する治療はもちろん、お客様の審美的なニーズにも応えられる体制や、それが当たり前のように浸透していることに驚き、日本における医療の在り方として新たな着想を得ました。」と古川は当時を振り返る。

当初、東京ミッドタウンメディカルセンターが予定していたのは、一般外来診療や健診・ドックを中心としたサービス。このコスメティックセンターのモデルを日本でも採用すべきだとリゾートトラスト(株)の伏見に提案したところ、東京ミッドタウンでやることが決まった。さっそく古川は皮膚科医探しに奔走し、業界の専門医師からの紹介はもちろん、大学病院の医師とも連携の機会を求めてプレゼンして回ったが、古川が考える皮膚科医や形成外科医に出会うことはなかった。そんな矢先、オープン後に東京ミッドタウンで働くことが内定していた看護師から、米国の研究機関に勤務し、たまに美容皮膚科医として診療するために帰国している皮膚科専門医がいるという話を聞き、紹介されたのが今泉医師であった。今泉医師も当時の日本の美容医療業界における過剰な広告スタイル、安売りキャンペーンや安全に対する感覚など、その体質に強い問題意識を持っており、安全で質の高い美容医療を提供したいという強い想いを抱いていた。こうした問題意識や今後のビジョンが古川と一致し、今泉医師は日本に帰国。東京ミッドタウン皮膚科形成外科クリニックノアージュ院長に就任するとともに、安全かつ高品質にこだわったメディカル化粧品ミューノアージュの開発に着手することになった。

今泉医師とメディカル化粧品ミューノアージュ

新たな転換期、「ハイメディック・ミッドタウンコース」スタート

こうした成長を続ける中、古川にとって新たな転換期を迎える出来事があった。それは「ハイメディック・ミッドタウンコース」という会員制の検診受託である。

グランドハイメディック倶楽部は、当時、山中湖、大阪、東大病院の3コースを展開していたが、健康意識の高まりとともに、ハイメディック会員権の需要が沸騰、3拠点の定数のオーバーが見込まれる事態となった。そこで、東京ミッドタウンメディカルセンターの一部を改修し、そこに4番目の検診拠点を開発するという案が浮上した。 また同時に、古川がAMCの社長だけではなく、リゾートトラスト(株)の執行役員(メディカル本部 副本部長)を兼任するという案がでてきたのだ。この展開に古川は、AMCの社長としてどうすればよいのか、考えたという。

「同じリゾートトラストグループではあるものの、グランドハイメディック倶楽部はあくまでも(株)ハイメディックが行う事業です。私自身は「健康と美」をテーマに日本で独自の医療ビジネスを展開していきたいというAMC創業時の気持ちが強くありました。リゾートトラスト(株)の執行役員となり、東京ミッドタウンメディカルセンターがハイメディック事業の検診拠点のひとつになると、ミッドタウンクリニックやAMCのオリジナリティに影響が出る可能性もあり、また私自身、リゾートトラストのメディカル本部の副本部長として、当然そこに割かなければならないリソースや時間が必要になります。さらに言えば、ハイメディック・ミッドタウンコースでは、既存のお客様に加え、約2,000人規模(当時想定)の会員様を新たに受け入れなければならず、しかも会員様は一般保険診療で受診される方と異なり、より質の高いサービスを求められます。それに応えられるだけの体制を構築しながらAMC独自のチャレンジを続けていくことが自分にできるのかと自問自答しました。」

一方で、高精度検診において世界をリードし、急激に会員数を増やしているハイメディック事業の一翼を担うのは、リゾートトラストグループへの貢献に加え、AMCやAMCで働くスタッフにとってもチャンスが広がり、有益なのではないかとも考えた。しかもVIP向けサービスについては東京ミッドタウンクリニック特別診察室の渡邊医師を中心に築き上げてきたノウハウもあり、スタッフも高い能力を発揮していた。最終的に古川は、グランドハイメディック倶楽部4番目の検診コースとなる「ハイメディック・ミッドタウンコース」を2013年10月に東京ミッドタウンメディカルセンターでスタートさせ、リゾートトラストの執行役員にも就任した。

「ハイメディック・ミッドタウンコース」スタート

新たな決意のもとスタートさせた「ハイメディック・ミッドタウンコース」も、予想を上回るスピードで会員数は増加。東京ミッドタウンでのキャパシティを超えるほどにまで成長を続け、古川はさらに別のハイメディック検診受け入れ先の確保に着手した。そして2015年4月、検診用として日本初となるPET/MRIやグランドハイメディック倶楽部として初となる乳房用PETなど最先端の検査機器を導入したミッドタウンクリニック東京ベイ(ハイメディック東京ベイ画像センター)をプロデュース。さらに同年12月に会員制専用のクリニック、ミッドタウンクリニック有明をプロデュース、オープンさせ、グランドハイメディック倶楽部に「ハイメディック東京ベイコース」を新設した。

ミッドタウンクリニック東京ベイのロビー

最新鋭の検査機器 乳房用PET(左)とPET/MRI(右)

※所属・インタビュー内容は、2021年5月時点のものです
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