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認知症に希望の光プラズマローゲン

専門家の声

専門家の声

Vol.01
「認知症」要因の真髄に迫る!

九州大学名誉教授 藤野 武彦 先生
九州大学医学部卒業以来、九州大学医学部第一内科において、内科とくに心臓・血管系と脳との関連を研究。九州大学健康科学センターが開設されたのを契機に、「健康科学」という新しいサイエンスに挑戦。1991年に「脳疲労」概念を提唱。

 

「プラズマローゲン」の最新研究から見えてきた認知症の治療

——まず、プラズマローゲンとは何か教えてください。

脳の中にある“リン脂質”と呼ばれるものの一種で、情報伝達や抗酸化などにも関係しているとても重要な成分です。脳細胞は考えたり、話したりすることで酸素を使って活発に動き、その結果で酸化されます。その際、細胞を酸化から守る働きをするのがプラズマローゲンです。また、最近の我々の研究では神経新生を促す作用があることも分かってきました。

——今年2月に九州大学で開かれたシンポジウムで、アルツハイマー型認知症のプラズマローゲン摂取に関する基礎と臨床の研究成果を発表されたそうですが。

臨床研究としては、昨年、福岡大学病院と共同で、軽・中等度の認知機能障害を持つ患者40名を対象にプラズマローゲンを含有した飲み物の摂取(偽薬・低容量・中容量・高容量の4群各10名)を6ヶ月間行ったところ、実施前に30点満点中平均19.3点だったMMSE(認知機能検査)の点数が、平均21.5点にまで統計的有意に改善しました。被験者によっては、20点から27点の「正常と診断されるスコア」まで改善した例もあったほどです。

分かりやすく言うと100点満点のテストで70点未満だった人が90点以上を取れるようになったようなもの。さらにもっと重症な方が支障なく日常生活を送ることができるレベルにまで改善した人もいるほか、ご家族からは「会話が増えた」といった報告もかなりありました。

——現代医療は、アルツハイマー型認知症に対して進行を遅らせる対症療法に留まっているとのことですから、かなりの成果と言えますね。では、認知症についてお話を伺いたいのですが、アルツハイマー病以外にも表のように認知症はいろいろあるのですね。

認知症とは、認知機能が社会生活に支障をきたすほど後天的に落ち続けた状態と言えますが、認知症のいろいろな症状には中核症状と周辺症状というものがあります。中核症状というのは記憶障害、それから空間や時間を正しく認識する見当識の障害など。周辺症状というのは行動心理障害と言われていますが、ものすごく怒ったり、物を盗まれたなどということを言ったり、あるいは、うつになったりイライラしたりということが両方とも出てくるのです。

レビー小体型認知症での経験はまだ多くはありませんが、プラズマローゲンの摂取で幻視が激減し、中には完全に消失した症例も見られます。
その結果、いろんな不安症状とか感情の起伏の激しさが減少して、話ができるまでになっています。したがって、プラズマローゲンはアルツハイマー病だけのものではなく、認知症全般に有効ではないかと考えています。

原因となる疾患として、代表的なものをいくつかご紹介します。

アルツハイマー型認知症

最も多いケースです。記憶障害(物忘れ)から始まる場合が多く、次第に、段取りやスケジュールが立てられない、仕事や家事が以前のようにできない、家にあるものや飲み薬などの管理ができなくなります。

脳血管性認知症

脳梗塞や脳の動脈硬化などによって、神経細胞が壊死し神経との連携が壊れたりすることで起こる認知症です。記憶障害や言語障害などの症状が現れやすく、歩行障害が出てくることもあります。

レビー小体型認知症

現実には存在していないものが見える幻視やパーキンソン症状(振戦、筋固縮)、また、不安症状や感情の起伏の激しさなどを伴う認知症です。

 

——認知症は世界的な問題ですが、まさに画期的な、これで道が開けるんじゃないか、というお考えですか。

もちろん全部ではありませんが、ひとつの大きな道が開けると思っています。ただ、プラズマローゲンが素晴らしいと言っても、これは“物”レベルなんですよね。実は“事”レベルで活用することが大切です。例えばコーヒーで言うと、誰と飲むかによって、このコーヒーの効果が違ってくるわけです。これが“事”レベルです。本来医療は、周辺環境との関係性においてしか存在しません。したがって、要素分解的に行いがちな今の医学ではアルツハイマー病の治療は困難になるのです。それは、アルツハイマー病の状態を脳機能の低下という部分だけでしかみていないからです。アミロイドβが沈着しているという“物”レベルでしかみていない。なぜアミロイドβが沈着してきたか、という経過が重要であり、沈着しても残っている機能を活性化させること、その人全体を元気にすることが大切です。そのためには、その人の人間の尊厳といったようなものを治療者側がまず認知することです。人間を全体として見ないとアルツハイマー病に限らず病気は治りにくいですね。
今の段階でもプラズマローゲンは、認知症に有効と言えますが、“物”レベルでなく“事”レベルで使うともっと有効です。すなわち、「プラセボ効果」と「寄り添い効果」とも言うべき“事レベル”治療法の効果です。
前者は、偽薬効果と訳されて何か人を騙すような悪いイメージがありますが、これは“その気になる”とプラスにもマイナスにも健康状態が変化するという、とっても重大な機能を示しています。これは、自己治癒力の重要な側面でもありますが。いずれにしろ、この効果(プラス効果)を利用しない手はありません。一方後者の「寄り添い効果」とは患者に対面して指導するという従来の方法を止めて患者の状態の受容とその個別の状況に合わせた対策を共に考えるということから生まれる効果です。後で述べるように認知症の方と家族との関係性においてとても重要な方針となります。現在のように“物レベル”あるいは要素還元的な治療・予防方針にとらわれると上手くいかない。とくにアルツハイマー病ではそれが顕著です。

「プラズマローゲンの基礎と臨床」での発表

「プラズマローゲン」は本来、自分でも生産できる?

——超高齢社会であり、65歳以上の4人に1人が認知症患者と言われている日本にとっては脳疲労を解消すること、その補助としてプラズマローゲンはとりわけ注目すべき成分ですね。

そうですね。今回は詳しく語れませんが、認知症の発端は「脳疲労」からというのが私の仮説です。そしてさらに「脳疲労」とは脳細胞におけるプラズマローゲン減少状態であると推測しています。そうすると、「脳疲労」を解消することがアルツハイマー病などの認知症の最も有効な予防法となるでしょうし、アルツハイマー病の有力な治療法となることが考えられます。実際、我々の動物実験データ、臨床試験データがこのことを強く示唆しています。  一方、プラズマローゲンは正常な状態では体内(ペルオキシゾーム※)で産生されるものです。しかし、「脳疲労」が強くなると生産が消費に追いつかなくなりプラズマローゲン減少状態に陥る、あるいはウィルス感染症などの炎症が起きると生産工場であるペルオキシゾームが破壊されてプラズマローゲン減少状態に陥ることも当然考えられます。そこで、体外からプラズマローゲンを補給することが重要になるのです。

——年齢に関係なくプラズマローゲン濃度を正常に保つには、ストレスで脳を疲れさせないということと、脳を前向きに使うということですね。認知症になってしまった場合には、周りがどういう支援をすると回復しやすいのですか?

家族が本人の尊厳を守る。非難をしない。「あなた、また忘れたの?」「また同じこと言ってる!」という発言が、周辺の人たちにしばしば見られますが、それをまずは止めることです。それを改めずにプラズマローゲンを摂取しても、せっかくの効果は少なくなるかも知れません。逆に、家族の非難…特に、結果として人間の尊厳を傷つけることを止めたら、それだけでも認知症がしばしば改善します。というのは、家族の非難で「脳疲労」はどんどん進行する、つまりは、どんどんプラズマローゲンが減少していくからです。そして、ここから悪循環、すなわち家族の非難→患者のプラズマローゲン減少・認知症増悪→家族の非難増大・・・が始まります。同時に家族も疲れ果てる共倒れ現象が生じます。そこで、認知症の治療は、まずはこの悪循環を断つことから始めなければなりません。そのためには前述の「寄り添い効果」を発現させることです。すなわち、患者の尊厳を損なう非難を止めて、患者自身が誰よりも不安に感じている認知機能低下を受容し共感することです。そうすれば、悪循環から一転して良循環に変わり、プラズマローゲンの効果も格段に上がるでしょう。

※細胞内の小器官のひとつ。プラズマローゲン合成の他にも、アルコール代謝や脂肪酸の分解、胆汁酸の生成など重要な機能を担っている。