人生100年時代を健やかに美しく女性の健康
研究発表
第33回日本女性医学学会学術集会にて、「エクオール産生能と腸内細菌叢および、食習慣、生活習慣関連因子についての検討」を発表
学術集会で注目公演のエクオール
ゆらぎがちな世代の大人女性の身体と心をサポートする成分として、年々期待の高まるエクオール。吉形玲美医師は世間で注目が集まる以前より、このエクオールの医学的研究を続けるオーソリティです。去る2018年11月3日・4日、岐阜市(長良川国際会議場)で開催された『第33回 日本女性医学学会』にて、その最新研究『エクオール産生能と腸内細菌叢および食習慣ならびに生活習慣関連因子についての検討』の発表講演が行われました。
エクオールの働きについて
今回の研究は、エクオールについて吉形医師が長年積み重ねてきた数々の臨床研究を発展する形で行われました。そこで、まずエクオールについて先生のこれまでの研究結果を中心に、様々な研究から分かっている事柄をご紹介します。
●エクオールとは?
エクオールはエクオール産生菌とよばれる腸内細菌によって、大豆イソフラボンから作られる成分で、女性ホルモン(エストロゲン)にとてもよく似た働きをするスーパーイソフラボンです。
●エクオールの働きについて
更年期の諸症状の緩和
多くの女性を悩ませる更年期症状には、身体的なものと精神的なものがあります。身体的なものではほてり(ホットフラッシュ)、めまい、頭痛、不眠、疲労感やだるさなどがあり、精神的なものでは、気分の落ち込み、イライラ、やる気がでない、不安感などを訴える人が多くなっています。更年期症状の主な原因は閉経を境に女性ホルモンの分泌量が減ることです。エクオールの女性ホルモン様の作用は、個人差はありますがこうした更年期の諸症状を、全般的に和らげることが確かめられています。
骨量の低下抑制
骨は「骨芽細胞」と「破骨細胞」が協力し合って作られます。骨芽細胞が骨を作り、破骨細胞が古い部分を壊す、これを繰り返して形の整った骨になります。加齢により骨量が減ることは知られていますが、特に女性ホルモンには骨芽細胞の働きを促進し、破骨細胞の働きを抑える作用があります。そのため閉経で女性ホルモンが減ってしまうと、骨量の減少に加速がかかりますが、エクオールは女性ホルモン様の力を発揮し骨量が減少するのを抑えてくれます。
生活習慣病、特に脂質異常症を改善
女性ホルモンには血管をしなやかに保ち、動脈硬化の予防や内臓脂肪の分解を助ける働きもあり、女性の体を生活習慣病のリスクから守っています。閉経を境にその保護効果が弱まると、それまで男性に優位に多かった「脂質異常症」「高血圧」「糖尿病」といった生活習慣病のリスクが高まります。この時、体内にエクオールがある人では、脂質異常症や高血圧、動脈硬化などの改善効果が確かめられています。
植物性エストロゲンと腸内細菌には相互作用の可能性
植物性エストロゲンとは、体内で作られるエストロゲンではなく、食品などの形で外から体内に入りエストロゲンの様に働くものを言い、大豆イソフラボンやエクオールはそれに当たります。植物性エストロゲンには、炎症性腸疾患や大腸がんの予防が期待されていたり、イソフラボンが含まれた食品を食べることで腸内の乳酸菌が増えたりする事が(動物モデル)で確かめられています。こうした研究結果などから、腸内細菌とエクオールの間にも相互作用があるのではと考えたことが、今回の研究の背景にもなっています。
エクオールを産生できる人の食習慣や生活習慣の関連
従来の研究からエクオールの元になる大豆イソフラボンを摂っても、エクオールを作れる人と作れない人がいること。また、大豆イソフラボンからエクオールを作るのは「エクオール産生菌」と呼ばれる腸内細菌群が関係していることが分かっています。そこで、今回の研究ではエクオールを作る能力(エクオール産生能)と腸内細菌叢(腸内フローラ)と食習慣や生活習慣との関連を調べ、エクオールを作る能力に影響を与えているものについて検討を行いました。
方法としては、本研究に同意が得られた閉経後の健康な女性58名を対象に、尿に含まれるエクオールの量から産生能があるかどうかを調べ、併せて腸内細菌の種類など腸内細菌叢について検査。さらに、食事・生活習慣を直近の1週間と1ヶ月の短・長二つの期間について調査し、総合的な検討を行いました。
エクオール産生菌保有者のうち、産生できたのはわずか22%
①エクオール産生菌は97%もの人が保有
これまでエクオール産生能がない人には、エクオール産生菌そのものがいないのではと考えられていました。ところが実際に調べたところ、産生能の有無にかかわらずエクオール産生菌そのものは97%もの人が持っていたことが分かりました。但しエクオール産生菌が働いている、つまりエクオールが作られていた人は22%と少なく、これは従来の研究結果とも矛盾していませんでした。一方、今回エクオール産生菌そのものを大多数の人が持っていたことは注目に値し、エクオールについて新たな可能性が示されたと考えられます。
②エクオール産生菌が働くエクオール産生者では腸内細菌が多様
腸内細菌叢の検査では、種の一つ上となる属レベルで約150種類の菌組成を検査し、主要な有益菌の「ビフィズス菌」「乳酸産生菌」「酢酸産生菌」「エクオール産生菌」などの比率や、さらに腸内細菌叢のバランス(多様性)などを細かく調べました。その結果、エクオール産性能がある人はそうでない人と比べ、腸内細菌が明らかに多様であることが認められました。
エクオール産生を高める食品と食生活
健康的な生活習慣、食物繊維やたんぱく質を継続的に摂る食生活が、エクオール産生能を高めることが示されました。具体的な内容は次の通りです。
・食品
エクオール産生者では、短期的な食習慣として・緑黄色野菜・淡色野菜・海藻類・根菜・きのこ・納豆・穀物を食べ、さらに長期的な食習慣では・根菜・きのこ・野菜類・油ののった魚(青魚)・肉類(赤身)・大豆食品・和菓子・せんべい類を食べていて、腸内細菌に多様性が確かめられました。一方、エクオール非生産者では、外食習慣が多く、さらに長期的な食習慣としてラーメンやアルコール類ではワイン、焼酎またコーヒーを多食していて、腸内細菌の種類も少ないという結果でした。
・生活習慣
特にエクオール非産生者に・お通じの回数が多い(過多)or少ない(便秘傾向)・喫煙習慣や飲酒習慣が認められました。
今回の研究によって、エクオール産生能はエクオール産生菌を持っているか持っていないかではなく、エクオール産生菌が活動しているかどうかによることが明らかとなりました。そして、エクオール産生菌が活動する要因として、腸内細菌の多様性が強く関連していること、さらに、腸内細菌の多様性を得るには健康的な生活習慣と、プレバイオティクス(腸内の善玉菌を増やす、または悪玉菌を減らす効果のある難消化性食品成分)やプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌などの健康に役立つ生菌製剤や生菌食品)を含む、バランスの良い食生活が関係していることが示されました。
なお、今回の研究発表内容は、北米閉経学会のオフィシャルジャーナル「Menopause」オンライン版(2018年9月4日付)に掲載されています。
エクオール
成分情報
研究発表
-
第24回日本抗加齢医学会総会において、「フェムゾーンから展開される新たなフェムテックと女性医療へのインパクト」と題して発表がありました。
-
第23回日本抗加齢医学会総会において、女性のエイジングとマイクロバイオームの変化からみた新しい女性ヘルスケアの展望について発表がありました。
-
第51回日本総合健診医学会において、ーフェムテック到来により期待される女性検診のパラダイムシフトと展望ーについて発表がありました。
-
【自験例・横断研究結果】腟・腸内細菌叢のクロストークについての探求
-
第15回抗加齢ウィメンズヘルス研究会において、女性のエイジングとマイクロバイオームの変化 -腟内・腸内細菌叢のクロストークから見た女性ヘルスケアの展望-について発表されました。
-
第22回国際栄養学会議において、「健常男女の血中および尿中エクオール濃度の比較とエクオール生成に影響を及ぼす因子の検討」についてポスターセッションで発表されました。
-
「第22回日本抗加齢医学会総会」シンポジウム「フェムテックと人生100年時代のアンチエイジング」において、「メノポーズマネジメントに活かすフェムテック」と題して講演を行いました。
-
「日本総合健診医学会 第50回大会」において、「腟内フローラから考える女性ヘルスケアのパラダイムシフト~子宮頸癌リスク低減の新たな展望を見据えて~」と題した講演を行いました。~オンライン開催~
-
第21回日本抗加齢医学会総会にて、「腟マイクロバイオームのエイジングによる変化と 乳酸菌含有素材のデリケートゾーンケアによる改善効果の検討」を発表
-
第33回日本女性医学学会学術集会にて、「エクオール産生能と腸内細菌叢および、食習慣、生活習慣関連因子についての検討」を発表
-
第32回日本女性医学学会学術集会にて、エクオールの長期摂取による生活習慣病リスクの改善効果について発表。
-
第31回 日本女性医学学会学術集会にて、エクオール長期摂取による更年期症状などの改善効果について発表
-
第26回 北米閉経学会(NAMS)にて、エクオールの生活習慣病リスク低減の可能性について発表
-
第15回日本抗加齢医学学会総会にて、エクオールを産生できる人は約3割。ホルモン補充療法と同等の改善効果が確認されたことについて発表
-
第13回更年期と加齢のヘルスケア学会にて、エクオール摂取にホルモン補充療法と同等の改善効果が確認されたことについて発表